2013年3月8日金曜日

天のしずく

☆月刊zero23  2013年1月号掲載分の書き下ろしです




昨年、山形での上映を心待ちにしていた映画
『モンサントの不自然な食べ物』を観た。

モンサント社は遺伝子組み換え作物(GM)を
主力商品としているアメリカの食品会社で、
もともとはPCBや枯れ葉剤を製造していた化学薬品会社。
アメリカ政府と手を組んでGM大豆の特許法を作り、
種子会社を次々と買収しながら種と除草剤をセットで販売し、
事業を拡大している。

インドの小規模農家が自殺に追い込まれている現状、
風媒体によってメキシコの伝統野菜に
異変が起きていることなども取り上げながら、
政治家との癒着や検査データのねつ造、
小規模農家やGMの危険性を指摘する科学者たちへの圧力といった、
食をビジネスに巨利を得る
多国籍企業の実態を明らかにしていく内容だ。

当初はドキュメンタリー番組として
ヨーロッパでテレビ放送され、
EUやヨーロッパ各国の遺伝子組み換え作物に関する
政策に影響を与えたそうだが、
日本がTPP参加になればどうなるのだろうと滅入ってしまう。

そんな折れそうな気持ちを支えてくれる
映画が日本で製作された。
 食の原点を見直す『天のしずく』。
いのちのスープで知られる料理研究家・辰巳芳子さんの
ドキュメンタリー映画だ。

料理教室でお鍋の中で木べらを動かしながら
「野菜たちがね、まごつかないように動かすのがコツですよ」
と語る辰巳さん。

スクリーンに映し出されるのは、
食材と語り合うような調理風景、土を耕す農家の人々、
土を素材にした芸術家など。
日本独特のやわらかな色調の風景が随所にちりばめられ、
ハンセン病を患った方と
「生きてみないとわからないことってたくさんあるわね」
と語りあうシーンも胸を打つ。

ご主人と結婚するにいたった理由、
ほんのわずかな新婚生活、
その思いをずっと大切にしてきたことなど、
普段はあまり語れることのない部分にも触れている。


ドキュメンタリーはあまり集客が見込めない
と言われているそうだけど、
東京では異例のヒットとなり、
山形でもなんと1000人を超える来場者があったとか。
料理はもちろん、辰巳さんご自身の生きる姿勢が、
多くの人の心に響いたのだと思う。
私自身、ふとした場面で何度も泣いた 。

この映画を山形で上映するにあたって、
実行委員をされた真紀子さんがラジオに
告知にきてくださり、
「80歳になるのが楽しみになりました」
とおっしゃった。
その言葉にふかくうなずく私。

30代の頃、「早く80歳になりたい」
とよく口走っていたのを思い出す。
ちょうど双子のきんさんぎんさん が
テレビに登場した時期で、
80歳にもなれば何もかも達観し、
動じないで過ごせるのだろうと思ったのだ。

が、しかーし、
どんなに願っても
30歳から80歳にはなれない訳で、
ましてやそれなりの経験を積まないことには、
理想の80歳にはなれないだろう。
一番大変な時期をはしょって年だけとっても
中味がともなってなければ意味がないしね 。

私などは、はしょらなくても適当すぎて、
未来の80歳像はかなりあやしいのだけど(苦笑)


ヒトが人であるために。

天と大地の間で生きる私たちにとって、
生きる基本とは何か。

真の生命を育み、つなげていく、
本当の食とはどんなものなのか。

観ている人それぞれが、それぞれの場面で
「いのちと愛」のしずくが
心に染みていく映画だと思う。


天のしずく公式ホームページ
http://tennoshizuku.com/

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